数値や画像には映らない、でも確かにそこにある「気のせい」な揺らぎ。
東洋医学という、少し不思議でやさしいレンズを覗きながら、日々の澱(おり)をほどき、心を満たして歩んでいくための静かな備忘録です。

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首から、背骨の調律へ。へたった寝具を延命する、ぷにぷにの重ね着。

五感をほどくお守りたち
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長年使っていた安物の枕を『ヒツジのいらない枕』に買い替えたお話を書きました。

枕選びの「沼」で立ち止まる。深い眠りを求めない、無難なお守り。
枕選びは底なしの沼。臨床20年の鍼灸師が『ヒツジのいらない枕』をプロの視点で徹底レビュー。快眠の魔法を求めるのをやめて、首の負担軽減と寝返りのしやすさという「お守り」としての本質に立ち返る、手入れも身軽な寝具の調律論です。

劇的な快眠という名の「100点満点の魔法」は起こさないけれど、どんなに疲れて強張った夜でも、常に「合格点の75点」を静かに、タフにキープし続けてくれる。
そんなあの黒いゴム素材(TPE)の「究極の無難さ」に、私は一生活者として、そして首や肩を診るプロとして、深く救われたのです。

頭と首をあずけるだけで、あれほど首元の緊張(澱み)がスッとほどけていくのなら 。 もし、あのぷにぷにとした格子を、身体全体に敷き詰めて眠ったら、一体どうなるのだろう?
そんな尽きない好奇心が、私の寝室に、新たな「お守り」としての薄いマットを迎えるきっかけでした。

我が家で長年愛用しているのは、日中は折りたたんでソファーになるタイプのマットレス。
日々の暮らしにとてもよく馴染んでいてお気に入りなのですが、数年も使ううちに、どうしても腰が当たる中央部分に、ほんの少しの「へたり」が出始めていました。いわゆる底つき感という、骨がシーツ越しに床の硬さを感じてしまう、あの感覚です。

東洋医学をベースに身体を診ていると、寝具のこうした小さなへたりは、見過ごせない「日常の澱」になります。
へたった場所に身体が沈み込むと、寝ている間、骨格は無意識にバランスを取ろうとして余計な緊張を溜め込んでしまうからです。

かといって、ソファー兼用の大きなマットレスを丸ごと買い替えるのは、経済的にも、暮らしの身軽さの面でも、少し大ごとで躊躇してしまう。

そこで私が選んだのが、買い替えるのではなく、今のへたった寝具の上に「薄手の一枚」を重ね着させて、寝心地を調律(延命)するという方法でした。

そうして重ねた『ヒツジのいらないマットレス(トッパータイプ)』。

実際にその上に横たわってみて、身体が受け取ったのは、「硬すぎず、柔らかすぎない」という絶妙な安定感でした。

ウレタンのように身体がじっとりと沈み込みすぎることもなく、かといって硬い布団のように骨が当たる痛さもない。敷布団の上に「ぷにぷにとした適度な反発力」が1枚乗るだけで、肩、背中、そして一番へたりを感じていた腰の重さが、三角形の格子によってまるで手のひらで均等に支えられるように綺麗に分散されていく。

枕と同様に、ゴム特有のしなやかな弾力があるおかげで、寝返りを打つときにも腰に余計な力が入りません。朝起きたときに、背中や腰のあたりに「強張り」が残っておらず、身体がフラットに優しく着地できているのを実感します。

そして、施術を仕事にする私にとって、このマットの「お手入れの引き算」には、枕と同じくらい大きな拍手を送りたい。

分厚くて重いウレタンのマットレスは、干すのも洗うのも大仕事で、それだけで暮らしのエネルギーを奪う「澱」になります。 しかし、このトッパーはとてもシンプル。外側のテンセルカバーは外して洗濯機に放り込むだけ。そして中のゴム素材は、カバーを洗っているついでに、お風呂場でシャワーでサッと流すか、あるいは気になったときに軽く水拭きするだけでお手入れが完了してしまいます。

ダニや埃、寝汗の湿気といった心配を一切しなくていいこの佇まいは、日々の暮らしをとても身軽にしてくれます。

ただし、このお守りにも、実際に暮らしてみることで見えてきた「ふたつの難点」があります。

一つ目は、「毎晩、敷き直すひと手間」があること。 我が家はソファーベッドとして使っているため、夜にベッドの形に広げる都度、このトッパーを上に重ねて敷き直す必要があります。毎晩の「+1枚」のこの作業は、正直に言って、少し面倒ではあります。

二つ目は、枕と同じく、「見た目の薄さ以上に、かなり重い」ということ。 このTPE素材は密度がしっかりしているため、持ち上げるとずっしりとした重みがあります。もし毎日、このトッパーを綺麗に畳んでクローゼットの奥に片付けるような生活スタイルを想定しているなら、非力な女性にとっては毎朝毎晩の「よっこらしょ」という大変な重労働になるかもしれません。

敷きっぱなしのベッドなら心配ありませんが、「毎日上げ下ろしをする」という方は、この重さだけはあらかじめ覚悟して迎えたほうがいい。そう誠実にお伝えしておきます。

毎晩敷く手間や、持ち上げたときのずっしりとした重さはあります。

それでも、一日の終わりに横たわった瞬間、背骨の緊張がスッと抜けて身体が適切な位置に安定するあの感覚を知ってしまうと、その「手間」すらも、自分をいたわる心地よい夜の儀式に変わっていきます。

今の寝具を捨てずに、寝心地だけを極上に調律する。 そんな五感のお守りを、今夜の布団の上にそっと重ねてみませんか。

とふ

臨床20年。鍼灸師の目線で、世の中をふんわりと眺めています。
日常のあれこれも、結局は「全部、気のせい(気の状態)」。 そんな風に感じたこと、見つけたことを、気ままに書き留めておく備忘録です。

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