数値や画像には映らない、でも確かにそこにある「気のせい」な揺らぎ。
東洋医学という、少し不思議でやさしいレンズを覗きながら、日々の澱(おり)をほどき、心を満たして歩んでいくための静かな備忘録です。

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【ショートスリーパーの罠とお灸】「マイクロスリープ」は効率化ではない。脳の悲鳴を足元から静める養生。

日常の澱を解く
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【引用・トピックス】 「1日30分睡眠」「マイクロスリープ(微小睡眠)を重ねて可処分時間を増やす」といった極端な睡眠法がニュースやSNSで話題になることがあります。(出典:Yahoo!ニュース / SmartFLASH『1日30分睡眠の堀大輔、1週間生配信ですぐ爆睡…「マイクロスリープ10回」主張にツッコミ殺到』)

一見すると失笑を買いそうな珍事ですし、「またこういう奇をてらった主張で目立とうとする人が出てきたか」と、うんざりした徒労感を覚えた方も多いかもしれません。

ですが、臨床の現場に立って20年。 日々、過緊張でカチコチに強張った患者さんの身体に触れ続けている私の胸の中に湧き上がってきたのは、単なる呆れや怒りではありませんでした。

それは、「なぜ、こんな無茶苦茶な主張を信じ込み、縋り付いてしまう人が後を絶たないのか」という、現代社会に対する深い嘆きと危うさです。


「可処分時間」という呪縛にハックされた私たち

「睡眠時間を削れば、人生の可処分時間が増える」 「睡眠を短時間に分割・効率化して、もっとやりたいことをやる」

こうした言葉は、一見すると非常にスマートで、時間を有効活用する時代の最先端のように聞こえるかもしれません。

けれど、少し立ち止まって考えてみてほしいのです。 私たちは一体、いつから「眠ること=無駄な時間」「削るべきコスト」と捉えるようになってしまったのでしょうか。

朝から晩までスマホやPCの画面を見つめ、SNSのタイムラインや動画コンテンツ、終わらないタスクに追われ、「もっと成果を出さなければ」「置いていかれる」という焦りに背中を押されている現代人。

脳の警戒アラーム(交感神経)が24時間鳴りっぱなしの過覚醒状態の中で、追い詰められた読者や視聴者が「1日30分で平気になれる魔法」を目の前に提示されたとき、藁にもすがる思いでその言葉を信じ込んでしまう。

私には、その極端な主張そのもの以上に、「そこまで追い詰められなければ生きていけない読者側の切迫感」こそが、一番痛々しく、恐ろしい「時代の澱(おり)」に見えて仕方がないのです。


「マイクロスリープ」の正体は、脳の緊急停止(気絶)である

医学的・生理学的な観点から言えば、限界を超えた睡眠不足の最中に訪れる数秒〜数分の「マイクロスリープ(瞬間的な居眠り)」は、自己管理の技術でもなんでもありません。

それは、これ以上バッテリーを消耗したら命に関わると判断した脳が、意志とは無関係に強制的に電源を落とした「緊急停止(気絶)」です。

車の運転中にこれが起きれば一瞬で重大な事故に繋がるように、身体にとっては最後の防衛本能(悲鳴)に他なりません。

それを「睡眠の効率化」だの「分散睡眠」だのと都合の良い言葉に言い換え、自分自身を騙し続ける行為は、あえて厳しい言い方をすれば自傷行為と同じです。

喉が乾いてカラカラな人に「唾液を飲めば水分補給になる」と教えているようなものであり、どれだけ言葉で飾ろうと、身体の物理的な限界をごまかすことはできません。


身体を機械としてハックしようとする傲慢さ

現代社会は、あらゆるものを「数値化」「短縮」「ハック」しようとします。 効率よく稼ぎ、効率よく学び、睡眠すらもハックして24時間をフルに使い切る。

けれど、私たちの身体は精密機械ではありません。 土があり、水があり、季節のめぐりとともに芽吹き、休む「生き物(庭)」です。

「正気内に存すれば、邪干すこと能わず」という東洋医学の言葉があります。 身体の内側に十分なエネルギー(正気)が満ちていなければ、外からのストレスや不調(邪気)にあっけなく倒れてしまいます。

睡眠とは、一日の中で使い果たした「正気」を蓄え直し、頭に溜まりきった熱(上実下虚)を静かに足元へ降ろすための、最も尊く不可欠な「調律の時間」なのです。

それを「無駄だ」と削り取り、脳を酷使し続けた果てに待っているのは、自律神経の崩壊であり、心身の深い破綻です。


画面を閉じ、自分の足元にぬくもりを取り戻す

もし今、あなたが「時間が足りない」「もっと頑張らなければ」という焦りから、ショートスリーパーのような極端な健康法に心を奪われそうになっているなら。

どうか、そのスマホをパタンと閉じて、目を覚ましてください。

あなたが本当に求めているのは、「睡眠を削って活動する時間」ではなく、「強張った心身をほどき、安心して泥のように眠れる余白」のはずです。

言葉巧みなハック術やSNSのノイズに耳を傾けるのをやめて、今夜は自分の足元を手で撫でてみてください。 のぼせた頭とは裏腹に、足先がひやりと冷え切っていませんか。

冷えた足元に小さなお守りの火(お灸)を灯し、頭に上った熱を静かに下へと引き降ろしてあげる。

効率化という名の狂気から自分をそっと引き算し、布団に潜り込んで深く呼吸を吐き出すこと。 それこそが、忙しない現代社会で自分を見失いかけた私たちが、今すぐ自分に届けてあげるべき本当の「生きる知恵」です。


💡 眠れぬ夜の焦りをほどく、身体の調律法

頭に熱が上り詰め、布団に入っても目が冴えてしまう夜は、力づくで眠ろうとせず、足元から気を引き降ろすこちらの養生法を試してみてください。

【不眠とお灸】布団に入っても目が冴えてしまう理由。頭ののぼせを足元へ逃がす、眠りのための養生。
布団に入っても頭が冴えて眠れない夜、無理に目を閉じて焦っていませんか?不眠は頭に熱が上り詰めた「上実下虚」のサイン。無理に眠ろうとせず、足元の「気を下へ引き下げるライン」を手で探して調律する優しい養生法をお届けします。

色々なことがある毎日。頭や心に「澱(おり)」が溜まりそうな夜は、自分で自分の「気」を調律してあげるのが、一番やさしい解決策かもしれません。

日々を養生する
伝統的な東洋医学に基づき、現役鍼灸師が実践する「養生」の記録。お灸や眠り、心の整え方など、数値に頼らず自分の「心地よさ」を取り戻すためのセルフケアと思索の跡。

私が毎晩、布団に入る前に実践している、お灸や呼吸といった、数値を追わない「小さな養生の知恵」をこちらに置いておきます。

日常のなかで、知らず知らずのうちに強張ってしまった心と身体。 そんなとき、私は言葉で解決しようとせず、ただ「五感を心地よいもので満たす」ことで、こっそり身体の調律を行っています。

五感をほどくお守りたち
忙しない日々で強張る五感(目・耳・鼻・肌・心)を優しくほどく、暮らしの道具たち。臨床20年の鍼灸師とふが、自律神経を調律し、今日を優しく着地させるために実際に救われ、愛用している「お守り」のようなアイテムをストーリーと共に紹介します 。

臨床20年の鍼灸師の私が、実際に自分の暮らしの中で試行錯誤し、本当に救われた「暮らしのお守り」たちのお話です。

とふ

臨床20年。鍼灸師の目線で、世の中をふんわりと眺めています。
日常のあれこれも、結局は「全部、気のせい(気の状態)」。 そんな風に感じたこと、見つけたことを、気ままに書き留めておく備忘録です。

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