日々、画面を見つめ続ける現代人にとって、目の奥が重く熱を帯びる「眼精疲労」は切実な悩みです。
しかし先日、治療院の問い合わせフォームに一通の営業メールが届きました。そこに躍っていた言葉の数々に、私は思わず深い溜息をついてしまいました。
【実際に届いた営業メールの原文(一部伏せ字)】
件名: 【空き時間を売上に】新しいアイケアメニューのご提案
エリアごと1店舗のみ、「目の疲れ」を新たな来院理由・収益メニューにする〇〇 Wellnessをご案内しています。 スマートフォンやPCの利用が日常化し、目の疲れを感じる方は非常に多い一方で、「目が疲れたときにどこへ行けばいいのか分からない」という方も少なくありません。
〇〇 Wellnessは、既存サービスにプラスする形で導入できるため、 ・既存のお客様への新たな提案による客単価アップ ・来院目的が増えることによる来院頻度の向上 ・「目の疲れ」を入口とした、これまで来なかった新規顧客層の開拓 ・予約の空いている時間を新たな売上につなげる といった活用が可能です。 導入コストも初期費用なしでかなり低く抑えられており、大掛かりな設備や新たなスタッフ採用も必要ありません。継続利用につながりやすく、導入店舗の中にはリピート率100%となっている店舗もあります。
画面越しに目の疲れに苛まれている生身の人間を、ただの「空き枠を埋める売上」や「客単価を引き上げるフック」としてしか見ていない軽薄さ。
世の中には、こうした「消費者の過緊張」を巧妙に利用し、人の不調を金儲けの道具として切り売りするビジネスが溢れています。
▶️ あわせて読みたい: 「テレビで紹介!」「おすすめ治療院10選!」といった派手なアピールや買われた看板の裏側にある商業主義のカラクリについては、以下の記事で詳しく解説しています。

1. 東洋医学で解く「土(計算・損得)の過緊張」と人間性の漂白
東洋医学において、「考えること」「損得を計算すること」は五行の「土(脾胃)」の働きに属します。
適度な土の気は、生活を営み、物事を順序立てて整えるために欠かせない大切なエネルギーです。しかし、これが過剰になると「いかに得をするか」「損をしないか」「回収できるか」という損得勘定の計算機が頭の中で24時間フル回転を始めてしまいます。
今回の営業メールのように、目の前で困っている人の不調を「どうマネタイズするか」という数字の物差しだけで捉えようとするとき、人の心は「土の過緊張」を起こし、身体から温かい血の通った人間性を漂白していきます。
「この施術を導入すれば客単価が何千円上がる」「この空き枠を埋めれば売上が上がる」と電卓を叩いているとき、施術者側の頭には激しい熱が上り詰め、足元は冷え切っています。
売る側も買う側も、損得という脳内の数字ゲームに夢中になるあまり、お互いを生身の人間として感じ取る感性を失ってしまうのです。
2. 「初期費用ゼロ・簡単導入」という足し算の罠
営業メールで強調されているもう一つの魅力は、「大掛かりな設備も専門技術も不要で、すぐ導入できる」という手軽さです。
しかし、長年臨床の現場に立ち、人の身体に向き合ってきた身から言わせてもらえば、誰でもマニュアル一つで再現できるような手当に、人の深い過緊張を解きほぐす力はありません。
不調を抱える読者が本当に求めているのは、新しいメニューを買い足して「客単価」を上乗せされることではなく、情報過多で高ぶった自律神経を鎮め、余計な刺激を削ぎ落す「引き算の手当て」です。
「初期費用なし」「リピート率100%」という甘い言葉に飛びつき、自分の軸を捨てて安易な集客メニューに頼る店舗は、目の前の患者さんではなく「自分のお金稼ぎ」のことしか頭にありません。
手当てや施術という営みに対する敬意を捨て、手軽な足し算に逃げた瞬間、その空間から命の巡りを育む温もりは消え去ってしまうのです。
3. ビジネスの計算熱を下ろし、自分の体温を感じる「2つのライン・エリア」
世間の商業主義や「得をしたい」という損得のノイズに晒され続けると、私たちの頭には知らず知らずのうちに余計な熱が溜まり、目や首の周りを固く緊張させてしまいます。
損得の計算機を一度脇に置き、頭に上り詰めた「計算熱」を下へ引き降ろすために、お灸の手当てでは痛む目元ではなく、身体の端にあるラインへポッと温もりを届けます。
- 【足首〜足の裏・くるぶし周り】(頭に上った計算熱を下へ引き降ろす): 内くるぶしの後ろや足の裏の凹みラインを優しく温めることで、頭部に集まった過度な緊張熱を物理的に足元へ引き降ろし、目元の引きつれを和らげます。
- 【手の甲〜前腕・手首周り】(手労働の過緊張をほどき、首肩・頭部をゆるめる): 親指と人差し指の骨が交わるあたりの柔らかいラインを温め、日々スマホやPCで指先・腕を酷使している緊張をほぐし、頭部への巡りを整えます。
おでこと足首を自分の手で撫で比べてみてください。「あ、頭はこんなに熱いのに、足元は驚くほど冷えているんだな」と気づくことが、「自律神経の自覚」の第一歩になります。
詳しい手当ての考え方や、指先の手触りで「自分だけの心地よい場所」を見つける具体的なステップについては、ページ下部の【「気のせい」なゆらぎを、お灸でそっと整えて。】でお伝えしています。
4. 売上効率の競馬レースを降り、生身の体温で向き合う自律
「来院頻度を上げさせる」「客単価をアップさせる」——そうしたビジネスの競馬レースに巻き込まれていると、治療家も患者も、いつの間にか「取引」という冷たい関係の中に閉じ込められてしまいます。
けれど、本当の安心や身体のゆるみは、「いくら払ったか」「いくら稼いだか」という数値のやり取りからは決して生まれません。
大切なのは、世間が仕掛けてくる商業主義のノイズから静かに距離を置き、自分の身体が発している素直な声に耳を澄ますことです。
誰かが作った「客単価アップ」のシナリオに乗っかる必要もなければ、自分の不調を売上枠として誰かに預ける必要もありません。
計算機をそっと手放し、自分の足元の冷えに気づいてぽっと温もりを灯す。そうした「自分軸の選択」を取り戻したとき、目の奥の強張りはすーっと解け、静かで温かい生身の巡りが戻ってくるのです。
🕯️ 日々を養生する
色々あった一日だけど、今夜は画面を閉じて、自分をいつくしむ時間にしませんか。
臨床20年の私が、毎晩の布団に入る前に実践している、自律神経をふわりと整えるためのお灸の知恵をこちらに置いておきます。

👇 火を使わず、仕事中や寝る前にも一番身軽に使える「貼るだけ」のお守りです。
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※「自分でお灸をするのに限界を感じる」「一度プロの手で全身を根っこから緩めてほしい」と感じたときは、一人で抱え込まずにお近くの信頼できる鍼灸院を頼ってみてください。
失敗しない治療院の選び方は以下の記事で詳しく解説しています。




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