第1章:「これを食べれば風邪を引かない」の足し算ニュースと、置き去りにされる「生身の土台」
「寒くなる季節、毎日欠かさず食べている予防食品とは?」「誰の冷蔵庫にもあるアノ食材で冬の対策!」——。
テレビの健康番組やネットニュースを開けば、毎年のようにこうしたキャッチーな見出しが踊ります。メディアが特定の食材や乳酸菌を「神予防フード」として持ち上げると、スーパーの棚から一瞬でその商品が消え去る光景も、今や冬の風物詩かもしれません。
「これを毎朝1個食べれば、今年の冬は風邪を引かないで済むはず」 「最新の乳酸菌をプラスしたから、自分の免疫力は完璧なはず」
そうやって手軽な単一の食品を日常に「プラス(足し算)」することで、私たちはどこか大きな安心感を手に入れた気になります。しかし、一歩立ち止まって考えてみてください。そうして「予防に良いとされる食べ物」をせっせと買い込んでいる足元で、自分自身の生身の生活環境はどうなっているでしょうか。
毎シーズン決まって風邪を引いて倒れてしまうのは、決して「特定の乳酸菌が足りないから」ではありません。連日の残業や睡眠不足、職場や家庭での息苦しい人間関係、常に何かに追われている過緊張……。そうした生活の土台が荒れ果てていることから目を逸らし、「これを食べれば大丈夫」と手軽な魔法に縋ってしまうことこそが、現代人の抱える一番の罠なのです。
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第2章:冷たいヨーグルトが「脾(胃腸)」を冷やす皮肉。日本人と「寒・湿」の身体論
東洋医学の眼差しで見ると、この「寒さ対策として毎日冷たいヨーグルトを食べる」という行動には、恐ろしい皮肉が隠されています。
東洋医学において、食べたものをエネルギーに変え、外敵から身体を守るバリア(気血)を作り出す根本の臓器は「脾胃(ひい:胃腸の働き)」です。書籍や古くからの知恵でも、脾胃という臓器は「温かさと乾燥」を好み、「冷えと湿気(寒・湿)」を極端に嫌うという性質を持っています。
ヨーグルトをはじめとする乳製品は、身体を冷やし、体内に不要な水分や重だるさ(湿熱)を溜め込みやすい食物です。木枯らしが吹き荒れる寒い季節に、「免疫力を上げるため」と冷たいヨーグルトを毎朝胃袋に放り込むとどうなるでしょうか。繊細な日本人の脾胃はたちまち冷やされて動きを止め、バリアの元となる「気」を作り出す工場そのものがストップしてしまいます。
つまり、風邪を防ぎたくて食べているはずの冷たい足し算が、巡り巡って自分自身の胃腸を冷やしてバリアを破っているのです。
季節の旬を味わうように、流行の健康法をイベント感覚で楽しむこと自体は何も悪いことではありません。けれど、それが自分の健康の「絶対的な軸」やすがりどころになってしまうと、足元で悲鳴を上げている自分の胃腸の冷えや強張りに、まったく気づけなくなってしまうのです。
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第3章:「風邪を引く」のは身体の正常な防衛反応。人間関係と「休めない空気感」という環境
「理由もなく風邪を引く」ということは、人間の身体において絶対にあり得ません。
東洋医学では「心身一如(しんしんいちにょ)」と教えます。心と身体は決して切り離せるものではなく、私たちが暮らしている「環境」の影響を丸ごと受けています。ここでいう環境とは、部屋の温度や湿度といった物理的な数値だけではありません。職場での息苦しい人間関係、家庭内で漂う緊張感、そして何より「休んではいけない」「止まってはいけない」という場全体の空気感こそが、私たちの正気(バリア)を猛烈な勢いで削り落としていく一番の環境変化なのです。
限界まで過緊張が溜まり、自律神経が戦闘モードのまま走り続けているとき、身体は最終手段として「風邪」という強制ブレーキを踏みます。発熱し、咳を出し、布団から起き上がれなくすることで、過熱した頭と神経を冷やし、全身の不要な熱を一度リセットしようとしてくれているのです。
つまり、風邪を引くこと自体は、決して「自分自身の弱さ」でも「失敗」でもありません。溜まりすぎた不調を外へ追い出し、命を守ろうとしてくれた身体の健やかな防衛反応(SOS)なのです。
「風邪=悪者」と決めつけて強力な薬や食べ物で症状を消し去ろうとするのではなく、「あぁ、私は休めない空気の中で、それだけ限界まで頑張りすぎていたんだな」と、自分の生活環境の痛々しさに気づいてあげること。それこそが、予防の第一歩となります。
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第4章:外側の情報(足し算)を降り、胃腸と足元を温める手当て
テレビやネットが囁く「神予防フード」の噂から一度そっと耳を遠ざけ、冷え切ったお腹と足元に温もりを取り戻す「引き算の手当て」を始めてみましょう。
風邪を引きやすい時期の身体は、過剰な情報や緊張によって頭や胸に熱がのぼせ(上実)、下半身やお腹が冷え切っている「上実下虚(じょうじつかきょ)」の状態に陥っています。まずは、以下のゾーンへ優しく手を当て、じんわりとお灸の温もりを届けてみてください。
- 【足首〜足の裏・くるぶし周り】: 下半身に停滞している冷えを追い出し、頭に上った過剰な熱を下へ引き降ろして全身の寒気を抜くための基本ゾーン。
- 【みぞおち〜下腹部・すねのライン】: 冷たいものの摂り過ぎや考えすぎで冷えて強張った脾胃(胃腸)の動きを助け、自前のバリア(気血)を再び生み出すための土台ゾーン。
手のひらの温もりでお腹や足首を包み込み、「今日もよく働いてくれてありがとう」とそっと語りかける。ミリ単位のツボ探しで頭を緊張させる必要はありません。自分の身体の手触りを感じる時間が、冷え切っていた胃腸の緊張を解きほぐしていきます。
詳しい手当ての考え方や、指先の手触りで「自分だけの心地よい場所」を見つける具体的なステップについては、ページ下部の【「気のせい」なゆらぎを、お灸でそっと整えて。】でお伝えしています。
第5章:季節の旬を味わい、自分の身体を愛おしむ「自分軸」の暮らし
「毎朝これを食べなければいけない」という強迫観念を一度手放してみると、日常にはもっと豊かで温かい選択肢が溢れていることに気づきます。
冬には冬の、あたたかく湯気の立つ旬の野菜や根菜を味わう。お腹が空いたら美味しく食べ、夜になったら温かい布団に入ってぐっすり眠る。寒さを感じたら足元を温め、疲れたら「今日はここまで」と自分の身体に降参して休む——。
健康とは、外側から特別な「神食材」を買い込んでプラスすることではなく、こうした極々当たり前の生の営みに自分の軸を戻していくことに他なりません。
もし、生活環境を整えてみても長年の疲れや深い冷えが抜けず、毎シーズンのように体調を崩してしまうなら、一人で抱え込まずにプロの鍼灸師の手へ身体を委ねてみるのも、選択肢のひとつです。
流行の健康法をイベントとして楽しむ自由を持ちながらも、決してそれに振り回されない。自分の生身の体温と胃腸の声を一番に信頼する「自分軸の暮らし」を、今日から静かに始めてみませんか。
🕯️ 日々を養生する
色々あった一日だけど、今夜は画面を閉じて、自分をいつくしむ時間にしませんか。
臨床20年の私が、毎晩の布団に入る前に実践している、自律神経をふわりと整えるためのお灸の知恵をこちらに置いておきます。

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※「自分でお灸をするのに限界を感じる」「一度プロの手で全身を根っこから緩めてほしい」と感じたときは、一人で抱え込まずにお近くの信頼できる鍼灸院を頼ってみてください。
失敗しない治療院の選び方は以下の記事で詳しく解説しています。




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