「死ぬと思っていた。しかし医療は想像以上に進歩している」
56歳でフリーに転身した直後、血液のがん「悪性リンパ腫」のステージ4と診断された元フジテレビアナウンサーの笠井信輔氏(63)。過酷な抗がん剤治療の末に「完全寛解」を果たし、入院中に1食3〜4時間かけて食事を詰め込み、隠れてペヤングを食べたエピソードとともに、生きる力を語った。
(出典:TBS NEWS DIG / 静岡 SBSニュース)
悪性リンパ腫ステージ4という絶望的な診断から完全寛解を果たした笠井信輔アナウンサーのニュースを目にし、深く胸を打たれました。
全身にがんが広がり、過酷な抗がん剤治療に耐え抜いた日々。その壮絶な闘病記を読み進めながら、私は臨床20年の現場で出会ってきた多くのがん患者さんたちの姿を重ねずにはいられませんでした。
かつてあんなに元気だった方が、抗がん剤の副作用によって日ごとに痩せ細り、気力を奪われていく様子を目の当たりにするのは、医療に携わる者として本当につらく、切ないものです。
しかし、同時に私は知っています。 どんなに病期が進み、身体が削り取られても、人間の胸の奥に灯る「小さな生きる欲求」が、奇跡のような底力を呼び覚ます瞬間があることを。
今回は、現代の西洋医学の成果と、それを根底で支える東洋医学の「生命力(正気)」のあり方について、静かにお話ししたいと思います。
1. 抗がん剤の過酷さと「正常な細胞ごと削られる」臨床のリアル
現代の西洋医学におけるがん治療——特に抗がん剤や最新の分子標的薬の進歩には、目を見張るものがあります。笠井アナが命を救われたように、病魔(攻邪)を徹底的に叩き潰す西洋医学の攻撃力は、重病に直面したとき絶対に欠かせない柱です。
しかし、その圧倒的な攻撃力と引き換えに、私たちは大きな代償を払うことになります。
抗がん剤は、がん細胞という「敵」を攻撃すると同時に、患者さんの正常な細胞や、全身を巡る気血、免疫を司る臓腑の力まで容赦なく傷つけ、削ぎ落としていきます。猛烈な吐き気、手足の激しいしびれ、全身の倦怠感、抜け落ちる髪……。
西洋医学のデータや検査数値だけを追いかけていると、「数値は良くなっているのに、自分という人間そのものが壊れていく」という手応えのなさに苛まれ、自分自身を精神的に追い詰めてしまいがちです。
どれほど優れた特効薬があっても、それを身体の根底で受け止める本人の「生命力」が枯れ果たしてしまっては、過酷な治療を耐え抜くことはできません。
敵を叩く攻撃の陰で、削り取られていく患者さんの生身の土台をどう守るのか。ここに、東洋医学が果たすべき決定的な役割が存在するのです。
2. 「大層な生きる目的」なんて要らない。命を紡ぐのは小さな欲求
重病を宣告されると、人はつい「病気になったからには、何か意味があるはずだ」「残りの人生で大層な目的を果たさなければ」「立派に病気と戦わなければ」と、重い鎧を背負おうとしてしまいます。
しかし、臨床現場で患者さんの回復の芽を見つめてきた私から言わせてもらえば、大層な生きる目的や、立派な理念なんて一切必要ありません。
「何かを成し遂げるために生きる」と考えようとすること自体が、すでに脳と自律神経を強張らせる「足し算の過緊張」だからです。
過酷な抗がん剤治療の最中、患者さんの心を救い、命の火種を繋ぎ止めるのは、もっとちっぽけで、愛おしいほどの「身近な欲求」です。
「明日、また温かいご飯が一口でも食べられたらいいな」
「今夜は、いつもより少しだけぐっすり眠れたらいいな」
「大好きなあのアニメの続きが気になるな」
笠井アナもまた、過酷な副作用の中で「1食に3〜4時間かけてでも食べた」「隠れてペヤングを食べた」と振り返っておられます。
「病気だから粗食にしなければならない」「身体に悪いものは一切絶たなければ」という頭の頑ななマニュアルを手放し、「どうしてもペヤングが食べたい」という泥臭い欲求に従ったこと。それこそが、彼の冷え切った自律神経に「生きたい」という強い体温を呼び戻したのです。
極端に身体を壊すものでない限り、その人の「食べたい」「やりたい」という欲求が生命力の根源になっているのであれば、それは探られることなく肯定されるべきです。大層な理由なんていらない。小さな欲求こそが、東洋医学でいう「正気(しょうき=自ら治ろうとする生命力)」そのものなのですから。
3. 「一方からの視点」を抜け出し、東洋医学で身体の底力を持ち上げる
病に倒れたとき、多くの人がセカンドオピニオンを求め、何人もの有名病院の医師のもとを訪ねます。
しかし、どれほど異なる病院を巡ったとしても、同じ「西洋医学」の医師の意見を聞いている限り、それはあくまで「ひとつの角度(病気を叩く攻撃の視点)」からしか身体を見ていないことになります。絶対的な正解や、「これさえやれば絶対に安心」という万能の治療法は存在しません。
だからこそ、患者さんご本人が「東洋医学という、もうひとつの視点」を持つことからが、本当の治療のスタートになります。
東洋医学は、病魔と戦う西洋医学と対立するものではありません。むしろ、抗がん剤によって傷つけられた正常な細胞の「回復力」を高め、削られていく生命力の底上げをするためのパートナーです。
- 手足のしびれが少しだけ楽になる。
- 吐き気で塞がれていたお腹に、ほんの少しだけ食欲が戻ってくる。
- 不安で冴え冴えとしていた夜に、少しだけまどろみの時間が訪れる。
前向きになれる心がほんのわずかでも残っているのであれば、身体が「少し楽になる」という時間を獲得できるだけで、人はまた明日へ向かって頑張ることができるのです。
攻撃(西洋医学)だけに偏らず、受け止める土台(東洋医学)を整える。幅広く多様な視点を持つことで、人は初めて「病気」ではなく「自分の命」の主導権を取り戻すことができます。
4. 情報で溢れた頭を休め、足元に気を降ろすお灸の手当て
病気や不調に直面すると、どうしてもスマホで検索を繰り返し、頭(脳)ばかりが猛烈にのぼせ上がってしまいます。
「どうすれば治るのか」「数値はどうなのか」と頭で考えすぎているとき、足元や身体の根っこは氷のように冷え切り、自律神経は休む間もなく警戒アラームを鳴らし続けています。
まずは1日1分、情報でパンパンになった頭のスイッチを切り、足元に気を降ろす手当てをしてあげましょう。
足元の手触りを確かめるエリア意識
図面上の点を探して頭を使う必要はありません。まずはご自身の指先で、冷え切った足元にそっと触れてみてください。
- 足の裏の中央エリア
大地のエネルギーと接する身体の一番底です。足の裏の中央を手でそっと包み、お灸の温もりを入れることで、頭に上り詰めた強い熱を足元へと静かに引き降ろします。 - 内くるぶしとアキレス腱の間の凹みエリア
身体の深部を温め、傷ついた気血を補う要所です。くるぶしの後ろ周辺を優しく撫でて、冷えや凹みを感じる場所にお灸を据えることで、下半身の冷えを和らげ、自律神経を優しく撫で下ろします。
お灸の煙とともに、すーっと息を吐き出しながら、自分にこう問いかけてみてください。
「明日、何が食べたいかな?」
「明日、どんな小さな楽しみを残しておこうかな?」
具体的にどのエリアに触れ、どうお灸で調律していくかは、「気のせい」なゆらぎを、お灸でそっと整えて。のページでゆっくりご確認いただけます。
おわりに
笠井信輔アナの完全寛解という知らせは、単なる医療の勝利ではなく、「人間の生きる欲求の美しさ」を私たちに教えてくれました。
たとえ今、過酷な病や不調の只中にあって、身体がボロボロに削られているように感じていたとしても、あなたの中にある「生きる欲求」までが消えてしまったわけではありません。
大層な目的を持たなくてもいい。誰かに誇れるような生き方をしなくてもいい。
ただ明日、美味しいものを食べて、好きなものを眺めて、笑いたい。
そんな等身大の小さな欲求を愛おしみ、足元を温めてあげてください。その小さな1歩こそが、傷ついた細胞を呼び覚まし、あなたの命の底力をどこまでも支え続けてくれるはずです。
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