「それって病気なんですか」——。中学校から娘だけに届いた「お知らせ」の手紙を目にし、母親が猛烈に激怒する。学校側は健康診断の統計データに基づき、平均値から外れた部分について確認の通知を出しただけなのだが、母親は「我が子を異常者扱いされた」と被害的に受け取ってしまう。(出典:FORZA STYLE / Yahoo!ニュース)
学校からの何気ないお知らせ一つに対して、感情を抑えきれずに激怒してしまう親御さんのニュースを目にし、深く考えさせられました。
学校という組織(システム)は、集団の健康管理や統計上の平均値・基準枠に従って、機械的にお知らせを出すのが役割です。一方、ご両親が自分たちの体型や遺伝、我が子の成長の個体差を理解した上で「うちの子の個性」と捉えていること自体は、とてもフラットで素晴らしい姿勢です。本来であれば「学校のシステム上、こういう通知が来るのも仕方ないよね」とサラリと受け流せば済む話かもしれません。
それなのに、なぜ「病気扱いされた!」と背中を丸め、声を荒らげて「激怒」してしまうのか。
臨床の現場で無数の患者さんと向き合ってきた私の目には、これは単なる親の性格の問題ではなく、現代の親たちが抱え込まされている「深くて切ない過緊張(自律神経の不調)」のあらわれに見えるのです。
1. 「怒りすぎる」と「怒れない」は、どちらも同じ過緊張の悲鳴
臨床の現場に立っていると、患者さんの感情の表出において、二つの対照的なパターンに遭遇することがよくあります。
ひとつは、些細な出来事や他人の言葉に対して「そんなことで、そこまで怒るの?」と周りが引いてしまうほど、過剰に爆発してしまうパターン。 そしてもうひとつは、あきらかに不当な扱いを受けたり理不尽な目に遭ったりしているのに、本来怒るべき場面で「自分が悪いのかもしれない」と感情を殺し、全く怒れなくなっているパターンです。
一見すると、激怒する人と怒れない人は真反対に見えます。しかし、身体を診させていただくと、どちらも「過緊張によって感情の温度計(自律神経)が壊れてしまっている」という、全く同じ根っこから起きていることが分かります。
朝から晩まで「ちゃんとした親でいなければ」「失敗してはいけない」「子供を守らなければ」と気を張り詰めさせていると、脳の警戒アラーム(交感神経)が常に鳴りっぱなしになります。気や血がすべて頭部に上り詰め、足元が冷え切る「のぼせ」の状態です。
頭に血が上り詰めると、感情のグラデーション(微調整)が効かなくなります。 日常の小さな刺激に対して、温度計が「0か100か」でしか反応できなくなり、ある人は防衛本能として過剰に爆発(激怒)し、ある人は身を守るために感覚そのものを麻痺させて「不感症(沈黙)」になってしまうのです。
感情は決して「精神論」ではありません。あなたの身体の調律状態、すなわち「気血の偏り」がそのまま外側に溢れ出しているサインなのです。
2. 必死で一生懸命な親たちへ。「もっとテキトーに生きていいんだよ」
幼少期や小中学生のお子さんを育てる時期は、親にとって人生で最も責任が重く、余裕を失いやすい季節です。
「周りの家庭に遅れてはいけない」
「学校の基準から外れたら、我が子が困るのではないか」
そうやって真面目に、一生懸命に、必死で子育てに向き合っているからこそ、親の自律神経は知らず知らずのうちに限界まで締め上げられています。必死の思いで張っているバリア(鎧)があるからこそ、学校からの何気ない「お知らせ」という紙切れ一枚が、自分たちの頑張りを全否定されたように感じられ、刺々しい激怒となって跳ね返ってしまうのです。
ですが、私はそんな親御さんたちに、そっとこう声をかけてあげたいのです。
「そこまで必死に頑張らなくても、大丈夫なんだよ。もっとテキトーに生きていいんだから」
ここでいう「テキトー」とは、投げやりになることではありません。文字通り「適当(適度な塩梅)」ということです。
世間や学校が提示する「平均値(枠組み)」は、あくまで大勢を管理するための参考データに過ぎません。その外側の物差しに一喜一憂して必死になるのを一度やめ、「で、実際のうちの子はどうかな? ご飯も美味しく食べて、元気に笑ってるな」と、自分たちの足元だけを静かに見つめ直すこと。
大層な教育理念も、完璧な家庭像も必要ありません。肩の力を抜き、世間の基準を「へえ、システム上はそうなるんだね」とテキトーに受け流す引き算のゆとりこそが、親自身の強張った自律神経をほどき、結果としてお子さんにとっても一番の安心基地になります。
3. 身体の偏りが整うと、出来事をサラリと受け流せるようになる
治療室で多くの患者さんの身体を調律していて、いつも感動することがあります。
来院された当初は、職場や家族の小さな言動に激しい怒りを燃やしていたり、逆に何もかも諦めて塞ぎ込んでいた患者さんが、お灸や手当てによって足元が温まり、上半身の過緊張(のぼせ)が引いていくと、顔つきや言葉のトーンがガラリと変わるのです。
「先生、そういえば前まであんなにイライラしていた出来事、最近どうでもよくなっちゃいました。『なんであんな事で怒ってたんだろう』って自分でもおかしくて」
「今まで言いたいことを呑み込んでいたけれど、この前は相手に『それは困ります』って、穏やかに意思を伝えられました」
身体の偏り(気の滞り)が整うと、人は頭の中に「客観的な視点(余白)」を取り戻します。
目の前の出来事に感情をジャックされるのではなく、「ああ、相手は今そういう状態なんだな」「学校のルール上、こう書くしかないんだな」と、出来事を一歩引き、冷めた目で見つめてサラリと受け流せるようになるのです。
心を言葉や考え方で無理やりコントロールしようとするのをやめて、まずは過緊張を起こしている身体の強張りを解いてあげること。それが、不条理な出来事や世間のノイズに振り回されないための、最も手軽で確実な近道です。
4. 1分間、足元を温めて胸のみぞおちをほどく手当て
学校や世間からの知らせに胸がザワザワしたり、日々の忙しさで喉やみぞおちがギュッと縮こまっていると感じたら。
今夜はスマホや書類をそっと閉じ、1日1分、自分の身体を温めてリセットする手当てをしてあげましょう。
足元とお腹の巡りを取り戻すゾーンの手当て
- 足の裏中央〜内くるぶしの後ろエリア
頭に血が上り、イライラや不安で頭頂部がカッカと熱くなっているときは、一番遠い「足の裏の中央エリア」や「内くるぶしとアキレス腱の間の凹みエリア」を手で包み込むように温めます。手で触れて「ひんやり冷たいな」と感じる場所に温もりを入れることで、頭の熱が物理的に下へと静かに降りていきます。 - すねの外側〜足の甲のライン
みぞおちが硬く強張り、呼吸が浅くなっているときは、すねの外側の太い筋肉ラインや、足の甲(親指と人差し指の骨が交わる手前)を指先で優しく撫でてみてください。左右で触り比べ、「右だけ硬いな」「左だけペコッと凹んでいるな」と感じる場所にお灸の温もりを届けることで、みぞおちの詰まりが解け、お腹の底へスーッと息が届くようになります。
詳しい手当ての考え方や、指先の手触りで「自分だけの心地よい場所」を見つける具体的なステップについては、ページ下部の「気のせい」なゆらぎを、お灸でそっと整えて。でお伝えしています。
おわりに
学校からの手紙に怒りを爆発させてしまったお母さんも、決して意地悪で怒っていたわけではありません。我が子を愛し、必死に守ろうと頑張りすぎていたからこそ、過緊張の糸がプツリと切れてしまったのです。
頑張ることは素晴らしいことです。けれど、あなたの命や自律神経を削ってまで、世間の「平均値」や「正解」に合わせる必要はどこにもありません。
「まあ、うちはうち。もっとテキトーでいこう」
今夜は肩の荷をそっと降ろし、足元を温めて、愛おしいご自身の身体を深く休ませてあげてくださいね。
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